便秘に対する新薬が出てきています。 なんと15年ぶりらしいです。 これまでとは作用機序が違うものなので効果が非常に楽しみ。 といっても私は便秘ではないですから自分で使うわけではありませんよ(笑)
鍼灸院を営んでいると便秘に悩む患者さんが結構な数、居られるので主訴の病の他に便秘も一緒に治療対象とすることが多くあります。 その中には当然、病院にかかっている人もいるので、そのうち新薬を処方されたという方が現れるはずです。新薬の効果は果たしてどれくらい有るのでしょう。 思わず期待してしまいます。
これまでの一般的な下剤
基本的なのが「浸透圧性下剤」と「刺激性下剤」
前者はマグミットなどのウンチを柔らかくする薬。 塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤、高分子化合物などに別れます。浸透圧を使って腸から水分を引き出します。
後者はアローゼンなどの腸を刺激して無理やり動かす薬です。アントラキノン系、ジフェニール系があります。 薬に慣れると効きが悪くなります。
これらを組み合わせて処方される人が結構いましたが、この2つでは(ウンチが)出ないときは出ません。
新しめの下剤
「上皮機能変容薬」
「クロライドチャネルアクチベータ」 ルビプロストン(アミティーザ)
「グアシル酸シクラーゼC受容体アゴニスト」 リナクロチド(リンゼス)
小腸上皮(内部表面)のチャネルに作用してイオンの移動に伴って出てくる水分でウンチを柔らかくする薬たちです。
「胆汁酸トランスポーター阻害薬」
エロビキシバット(グーフィス)
回腸末端の胆汁酸トランスポーターを阻害して胆汁酸の再吸収を抑える薬。大腸に胆汁酸が増えると、腸内の水分分泌と大腸運動促進が増します。
「オピオイド誘発性便秘症治療薬」
ナルデメジントシル酸塩(スインプロイク)
モルヒネ塩酸塩(アンペック) オキシコドン塩酸塩(オキシコンチン)などオピオイド系の薬を服用すると起こる便秘の副作用を改善するものです。消化管の末梢μオピオイド受容体に結合して腸でのオピオイド系の痛み止めの便秘効果を打ち消します。脳には血液脳関門があるので下剤の効果が届きません。痛み止め効果を出しながらオピオイド誘発性便秘症を改善する薬です。
「消化管運動賦活薬」
モサプリド
抗ドパミン薬。 ドーパミンが多いと消化器の動きが悪くなります。 逆にアセチルコリンが多いとよく動きます。 ドーパミンとアセチルコリンはお互いに拮抗するのでドーパミンを抑えればアセチルコリンがよく働いて胃腸が動き始めます。
などなど…。
ついでに。
プロバイオティクス
乳酸菌などをはじめとする○○菌たち。 最近流行りの腸内フローラによって腸内環境を整えます。
漢方薬
研究者が頑張って研究中ですが、とりあえず分かっているものの説明は「浸透圧性下剤」と「刺激性下剤」のどちらかに分類されていることが多いです。
鍼灸
薬ではないですが、漢方薬とともに昔から治療として使われてきた方法です。現代科学での作用機序は未解明ですが確実に消化器の動きを改善します。 最も体に負担がかからず、都合の悪い副作用の心配がない安全な方法として何らかの事情で薬がつかえない方にも使用できます。
個人的に期待してしまう新薬は「胆汁酸トランスポーター阻害薬」。 これなら黄色い健康的なバナナウンチが出てくるはずです。 逆にオピオイド系や神経伝達物質ドーパミンなどに作用させる薬は効果範囲が広いので副作用の管理がメンドクサソウです。 (笑)