治療者の立場からすれば極めて当然なのですが、どのような病であっても(仮にちょっとした肩こりや腰痛など大したことがないと思えるものでも)治るものと治らないものがあります。但し、これは絶対ではありません。原因不明で医者などに治らないと言われても治ったり、簡単に治ると思ってもなかなか治らないものもあります。 ではなぜこのような事が起こるのでしょうか?

診立て

治療者は知識と経験からどのような病かを推察します。西洋医学であれば様々な検査を行うものですが、東洋医学では症状はもとより脈や舌などの体の状態から考察していきます。これらの検査や所見はその時の患者の体調や精神状態などにより行う度に結果が違うことが多々あります。そのため一度の結果で確定できるものばかりではありませんがこの段階で大きく謝ると治せなかったり治りが悪かったりするのは当然です。(西洋医学での誤診も同じです)繰り返し診断し、特定の疾患だと思い込まずに絶えず自問自答する姿勢が誤診率を下げる唯一の方法です。

治療

病の考察が終わったら治療方針をたてて実際に行います。この時に最も効率的と思えるものを選ぶわけですがそれが一つであるとは限りません。また、直接的な方法が良いとも限らず急がば回れの治療が適切であることもあります。特に東洋医学は西洋医学よりも取れる治療方針が多くあり、試行錯誤の余地が大きいものです。 そもそも原因が不明の場合も多くあり、治療をしながら経過を見て変化を掴むことで初めて原因が判明し治せるような状態になることも多々あります。

時間が足りない

鍼灸治療は即効性が出しやすい治療法ではありますが、なんでもすぐに治る魔法ではありません。効きが一時的だったり、目に見える効果がでるまで時間がかかるものもあります。 様々な要因が考えられますが体から余っている何か(例えば水分)を出す治療は比較的効果が早く、足りないものを補給する治療(例えば栄養不良)は長くかかる傾向となります。東洋医学的な言葉を使えば気の病は比較的早く血の病は比較的遅いということになります。ただし、なんにしても病というものは医者や医療が治すのではありません。ご本人の体が治すのです。免疫が働き、代謝が行われ、必要なところに必要な作用が起こって初めて治ります。治療者ができるのはそれらが円滑に行えるようにお手伝いするだけに過ぎません。時間がどれくらい必要なのかはその時の状態によりますが変化を起こすための時間は絶対に必要なものなのです。

努力と協力が足りない。

繰り返し起こったり慢性的に起こっている病はその人の生活習慣に関わっていることが多くあります。そういった場合は他人任せの治療では思ったような効果は出ません。患者の生活習慣の改善は絶対に必要です。また、改善したからといってすぐに効果が出るとも限りません。しかし、かならず変化は起こります。 すると体調が変化して「診立て」が変わるかもしれません。これまでと違ったさらなる「治療」が必要かもしれません。そもそも単純に「時間が足りない」のかもしれません。そして「患者の努力」が足りないのかもしれません。もちろん、治療者の「努力」や知識、ウデが足りないのかもしれません。しかし、これらは繰り返し患者を見ることでしか解り得ないものなのです。

西洋医学にかかっているとまるですべての病の原因が解っていてそれに対する答えが既に準備されているかのような錯覚を起こしますが、そのようなものはごく一部の病だけです。生きている人を取り巻く要因は無数にありそれらが複雑に絡まり合っています。その何かが病を起こしていたとすれば原因は極めて分かりにくいものとなります。そのため、洋の東西を問わず医療とは本来不確実性の高いものであり、それでも結果を良くしようと思うのなら治療者と患者の双方の努力と信頼が必要になります。治療者は絶えず学び、考えることでしか患者に報いることはできません。患者も治療者に任せきりではなく自分ができる努力をおこなって初めて治療のパフォーマンスは最大に発揮されるのです。治せるものはその結果が上手く出せたもの。治せなかったものはこれまでにあげた何かが足りなかったものと考えられます。

ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

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