現在、医学の発展を体系的に進めているのが西洋医学でしょう。 かつては東洋医学も行われていましたが時代の流れで一度取り潰されてしまい、その体系は失われたように思います。
西洋でも東洋でも「発明、研究、治療」なんてものはいつだってトライ・アンド・エラーです。 全てが失敗なしに上手くいくことなどありえません。 しかし、医者は失敗をしてはいけないという風潮があります。 こんな非現実的な風潮がなぜ起こるのでしょう?
これは医者は患者を救えて当たり前、患者は医者に治してもらって当たり前という考えの延長に起こるものです。 現代西洋医学の医学体系は研究者が病や生理、薬理を解明し医者がその結果を教えてもらって臨床で使うというのがほぼ全ての形だと言っていいでしょう。 例外的に大学病院などは研究、教育と臨床を同時に行っていますが、それでも広い意味では研究者と臨床家は住み分けていると言えます。 西洋医学の場合、研究結果が一応、科学的に明らかになっているので条件さえ合えば同じ治療で同じ結果を生みやすいのです。 なので建前としては解明されている病は全て治ることになっています。(そうでないと科学的とは言えない) だから殆どの人が治る病で治らないと医者が失敗したんだ!と思われます。
しかし、実際の臨床では治らない人が稀に現れます。 同じ病名なのに薬の効きに差があり、同じ病に同じ手術や手技を成功させても治らない人がいる。これは医者であれば皆知っている現実です。
このような所は現代西洋医学の非科学的な部分です。 実際の病気が解明された病気の定義から外れているために前提条件が崩れて予定通りの効果が出ないのだと仮定ができます。
この医学の非科学的部分で治らないのは果たして医者の失敗のせいなのでしょうか? どう考えても違います。 同じ考えで治療している限り、治らない病は誰がやっても治りません。逆に治る病は誰が治療しても治ります。 これが医学が体系立っていることの最も大きなメリットであり、この体系に縛られてしまうことがデメリットでもあります。
正しいとされている研究結果に基づいた治療を行うので、よっぽど重大な過失による失敗でない限り、医者は治療が効かなくても責任を追求される事はありません。医者は科学と法によって守られているのです。
東洋医学の場合、残念ながら昔のような体系的な医療では無くなってしまいました。勿論、東洋医学を題材にした研究は行われていますが、あくまでも西洋医学に則った東洋医学であり、その本質からは程遠いように思います。
体系的な研究や立証がされないということは今日の東洋医学は臨床家個人が研究もこなさなければいけないと言うことです。 さらに殆どの場合は西洋医学で効かなかかった人が来られますから、同じ考えで治療をしてもほぼ無意味です。その患者の治療に関して参考になる物が少ないので西洋医学よりも多くのトライ・アンド・エラーを行う必要が発生します。
持てる知識で治療をしてもすぐに効果が現れない場合、治療を通してその患者の情報を集め、考察し次の治療に活かす。これ以外に東洋医学者のするべき行動は無いでしょう。それを治療の失敗というのか、それとも次に繋がる治療の下準備だと考えるのか。 ここも患者と治療者の認識のズレが起こりやすい所ですね。(´・ω・`)
つづく…
※ここで出てくる医者とは医師限定ではありません。西洋、東洋、手技などを問わず医に関わる全ての人達です。