ワクチン接種ってするべきか?
ワクチン。世界初の天然痘ワクチンからはじまった病気予防の重要な手段。特に現代医学の有効な治療手段の一つである抗生剤が効かないウイルス性疾患の予防としても効果が見込めるもの。
一般的にウイルスに効く薬は開発が難しく、出来たとしてもウイルスの変異などによっていずれ効かなくなるという欠陥がある。
細菌に対する抗生剤も使いすぎると効かなくなるが、ウイルスと違って多くの場合、人の手によってある程度のコントロールが効くぶん、まだ扱いやすい。
ワクチンを否定する人たち
近年の新型コロナウイルスワクチンに限らず、インフルエンザやかつての天然痘、子宮頸癌など、ワクチンに対して嫌悪感を抱く人はいつの時代も一定数いるものです。 その根拠の多くの不安は副反応によるもの。それに続く効果への疑問といったところでしょう。
先ず、目立つ副反応はどのような薬でも一定数の人に起きます。例えば、身近な薬剤の代表であるアルコール。消毒綿化でもアレルギーを起こす人がいますし、酒を飲むと体調が悪くなってしまうため、はじめから全く受け付けられない人もいます。 薬でなく食品であってもアレルギーによって命の危機になることもあるように、程度の差があれ副反応は起こりうることですからワクチンでの副反応も本来は何も特別なことではありません。
ただ、食品の場合は本人が過去の経験から自分が体調不良になる原因を知っていることが多く、それを避けることができます。
ワクチンの場合、多くの人にとっては未知のものです。摂取したことがないので副反応の程度も症状もわかりません。すると、どうしても副反応が起こった人の体験談が判断基準となってきます。それも特に強く起こった人たちのものが。症状が軽かったり、何も起こらなかった人はそれが当たり前で体験談を聞く機会がそもそもありませんから、集まる情報は副反応が起こったものばかりになります。すると、怖くて危ないイメージが刷り込まれてしまいます。
薬も食品も効果だけということはない。
作用と反作用。効果があれば副反応もあります。これは当たり前なことです。副作用のない薬は効果もありません。 つまりは偽薬です。
副作用は必ずあるので問題はその程度と発生頻度になります。 当然、程度が軽く頻度が少ない割に効果が高いものが良い薬です。 ただ、基本的に作用が強いと副作用も強いのでトレードオフの関係のなかで丁度いい塩梅を見つけることが必要です。
ある程度、効果を犠牲にして安全性を優先すると食品になります。
ある程度、効果を優先して安全性を犠牲にすると薬になります。
しかし、どちらの場合も絶対に安全。絶対に危険というものではありません。
ワクチンは薬です。効果が優先されているのは当たり前であり、副反応の可能性は捨てきれません。それでも人を救おうとして開発されているものです。副反応を抑える研究が進んでいることもあり、強い副反応が頻発する不良品は基本的に世に出回らないはずです。
副反応の発生確率による判断は人によって感じ方が違うでしょう。1%でも少ないと感じる人。0.0001%でも多いと感じる人。ワクチンに対して恐怖や嫌悪をもつ人は過大に怖がるし、科学、医学を過信する人はリスクを過小評価します。
ただ、ほとんどの方が問題とするところは統計による確率そのものではなく、摂取した時、自分または大切な人に重篤な副作用が起こるかどうかですから、ワクチンに対する考えは最終的にはその人の思い込みと性格によると言えます。
ワクチンの効果
ワクチンの特性上、すぐに効果が見えないため無いものと思ってしまいがちですが、基本的にあります。 最大の功績は天然痘の撲滅に成功したものですが、毎年流行るインフルエンザがパンデミックにならないのはワクチンのおかげであるかもしれません。
ワクチンは対象の病に罹りにくくなり、罹っても重篤化しにくくなります。 罹らなくなるわけでも、重症化しないわけでもありません。どちらも程度の問題です。
ワクチンは人の免疫を操作して予め対象の病に備えるだけものですから、たとえちゃんと摂取した人でもウイルスに感染した時に免疫応答が悪ければ発症します。
効果が無いと言う人は近視眼的せっかちさんか、ワクチンに完璧を求め過ぎです。逆にワクチンの効果を過信していてはどのみち容易に感染しますし、感染時の状態が悪ければ悪化もします。
ワクチン接種しない人も恩恵を受けている
ワクチンは個人で見ると病に罹る可能性と重症化の可能性を下げているものですが、その実は社会全体の感染者数の抑制に大きな意味があります。
感染者の体内では免疫によりウイルスの増殖を抑えているのですが、ワクチンを摂取していると獲得免疫によってその効果が高まります。
感染した人の体はウイルス産生工場と化していて、増産したウイルスを呼吸などによってバラまいていますから、その量が多いほどに周囲の人を感染させてしまいます。 ワクチンの効果によって獲得免疫があり、ウイルス増殖を抑えるよう良く働いていれば、人に感染させる可能性は減ります。
つまり、ワクチンを摂取した人はもちろん、摂取しなかった人も間接的にワクチンを恩恵を受けているのです。自分の周りの人がワクチンを受けているほど、周囲の環境にウイルスがいる可能性が減ります。
とはいえ、ワクチンが社会的な効果を出すには多くの人が摂取しないと駄目です。皆が摂取することで体質的、体調的にワクチン接種が出来ない人や健康弱者を守ることができるのです。
鍼灸とワクチン
ワクチンの効果は感染時、獲得免疫によってウイルス産生増加をすばやく抑えることです。それにはワクチンを摂取した時や感染時に免疫の働きが良くないと効果が十分に出ません。
ワクチンの摂取時期は自分で選べますが、いつウイルスが感染してくるかなどは誰にも分からないので日常的に体調を整えて置く必要があります。鍼灸はそのために非常に役立ちます。
とはいえ、免疫に対する鍼灸の効果はすぐに実感することはありません。鍼灸で即時効果が出るものは痛みなどの何らかの派手な症状が出ている時であることが殆どで、それも魔法のようにすべて一瞬で完治することはなく、緩和して快方へと誘導し治癒時間を短縮するものです。予防、緩和からへの治癒という点においてはワクチンのそれと似ている点があります。
また、ワクチンを摂取していない人で獲得免疫がない場合は、摂取している人に比べて免疫応答が遅れて体内でウイルスが増えるスピードが早く、発症、重症化リスクが上がります。ワクチンを摂取した人よりも更に日頃から健康状態に気をつける必要があります。
新型コロナウイルスにおいてワクチンの効果が見込めない変異株の話が話題に登りますが、人の免疫そのものを賦活させる鍼灸は変異株への耐性も高めることになります。
病はどのようなものも生物の免疫、自己治癒能力によってでしか治らず予防できません。免疫の働きは自分で自覚することは先ず無いため、スコアを付けて監視することも出来ません。日頃から体調管理を行う以外にはなく、その一助として鍼灸は能動的に行える免疫賦活活動として役立つものなのです。
自分の周囲の人に対する危険回避。そして何よりも自分の健康と長寿のため。ワクチンと鍼灸の後効果は、万が一の感染等に対する保険として似ている点が多いのです。