鯨肉

捕鯨は欧米国の根強い反対運動によって制限されていますが、鯨肉は一定数国内でも出回っていて、ちゃんと需要があります。

捕鯨反対、継続に関わるそれぞれの主張は歴史的な背景のもと、解釈が異なっていたり、単なる思い込みであったり、宗教的な思想が異なっていたり、文化の差であったり、政治的な都合があったりとなかなか意見の一致をみません。
私が個人として思うに、ヒトだって飢えた肉食獣の群れに遭えば襲われます。 人間を含め全ての生き物は食物連鎖の中にあり、それぞれが地球上に生まれた一つの命として、殺してはならないもの。食べてはならないもの。なんてのを区別することなどはできないとは思いますが、万物の霊長となってしまったヒトはその区別をしてしまうのですね。 これは一種の特権意識からくる傲慢なのでしょう。
 

日本では鯨は盛んに食べられていました。

昔、仏教が殺生を忌むために大手を振って獣肉を食べられないこともあり、主として魚に動物性のタンパク源を求めました。海に住む獣「鯨」は魚に分別され、とても大切な食肉だったようです。 江戸時代には2000万人にもなっていた日本人を養うには図体の大きい鯨はタンパク原として重宝されました。 一頭仕留めれば肉が大量にとれて、数百、数千人分の食事となり、何よりも美味い。 野鳥や魚に比べタンパク源が豊富で味が濃厚。 大変なご馳走だった訳です。
 
 

日本人は鯨を残さず食べる。

生肉を塩、味噌、醤油などで保存する技術が発達し、海から離れた地域でも食べられるようになってくると、様々な鯨料理が開発され、庶民の口にも入るようになりました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

食用になった主な部位と名前

黒皮 皮と肉
さや 舌
テイラ 尾の身
小髭 歯茎
デンズル 顎の肉
フキワタ 肺
ウス 心臓
丁字 胃
蕪骨 頭骨の髄
百尋 小腸
小便袋 膀胱
オオワタ 大腸
豆腸 腎臓
タケリ 陰茎
 
その他、乳房、子宮、目玉、陰茎、各所の皮などありとあらゆる場所が食べられていましたが、あまり食用にならない部位は肝臓と膵臓。これらは漢方薬へ転用されていたようです。
 

鯨肉の栄養素


 
 
 
 
 
 
 
タンパク質が豊富で脂肪が少ないと馬肉に似ていますがコレステロールが馬肉の約半分です。また、イノシン酸が豊富で旨味が強いです。
その他、イミダゾールジペプチドと呼ばれる疲労(酸化)を回復、予防する働きを持つアミノ酸を多く含有しています。これは有名なのでサプリにもなっていますね…。


 
イミダゾールジペプチド含量(mg/100g)(阿部宏喜、2005「魚の科学辞典」より)

種類 筋肉 カルノシン アンセリン バレニン
鳥類 筋肉 294 120~1,033 5
硬骨魚 カツオ 普通筋 66 1,228
マグロ類 普通筋 656
軟骨魚 ウナギ 普通筋 414 7 4
ほ乳類 ナガスクジラ 赤身 130 5 1,466
ミンククジラ 赤身 134 35 1,874
筋肉 226~452 29~96 2
筋肉 770
筋肉 270~475 434 48

出典=「鯨肉に含まれるバレニンについて」(畑中寛)

鳥はよく漢方でも出てきます。アンセリンが豊富な疲労回復剤です。 鯨はバレリンが豊富なのが特徴です。 渡り鳥、回遊魚、鯨、チョウザメなどのような栄養補給をあまりしないで長時間運動し続ける生物の肉には抗酸化作用のあるアミノ酸が含まれていて、その行動を可能にしています。
 

プラズマローゲン

鯨の肝臓、延髄、小脳と大脳の皮質、髄質にある物質で神経細胞死抑制、抗酸化作用、多価不飽和脂肪酸の貯蔵細胞内シグナル前駆体の活性膜流動体の調整作用を持つ細胞の若返り物質。 アルツハイマー病の予防、治療として研究されています。 鯨の他にもホヤ、ホタテ、鶏、豚、牛などにも含まれていて、これもアンチエイジング効果を謳いサプリにもなっています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

鯨肉を食べなければいけない理由はありませんが、食べてはいけない理由もまた、ありません。

世界中に多様な食文化があってこそ、この世の資源は程よく保たれる訳で、一つの思想や文化で統一されてしまうと足りないもの、余剰な物が必ずできてしまいます。 日本食が世界に広まり、マグロやタコなどが大量に消費され始めた結果をみれば解りそうなものです。 どこに居ても何でも食べられる時代が便利である一方で、食文化くらいはもっと地域の特色がないと生きている楽しみ、旅行の楽しみも減ってしまうと思いませんか?
鯨に限らず文化によっては犬も猫も兎も鼠もあらゆる生き物は大切な食料です。 生き物を食すということは殺生するということと同義なので宗教観や感情論も出てきて話がややこしくなるのかもしれません。 それでもそこに住む人たちにとっては慣れしたんだ大切な食料であり文化なのです。 これは食に限ったことではありませんが、自分とは違う異色の文化を理解し、且つ自分たちの文化を守る。 そしてなにより、他の文化を奪わない。壊さない。 国際社会が平和で自由な世界を望んでいるのならこれらは最低限のマナーではないでしょうか?

松山鍼灸院 漢方鍼灸個別治療室 仁塾