このブログの症例報告では私がこれまでに診てきた患者さんの症例について色々と書き連ねて行きたいと思います。 もちろん、本人の特定は出来ないような内容でお送りしますので抽象的になる部分もあると思いますが、同じような症状にお悩みの方の一助になれば嬉しく思います。
 

夫源病

頭痛、耳鳴り、めまい、高血圧、うつ、不眠・・・。 といった症状を何年も持ち続けている。治療しても治らない。
このような状態になるとても有名なものは更年期障害ですが、そうではない場合、新たな病名?を提唱している人がいるようです。 その名も「夫源病」  この状態になったと思われる30代女性が来られました。
 
夫源病と名前が付いていますが、つまりは妻が夫から受けるストレスによって起こる不定愁訴、心身症ですね。 呼び名が変わっただけで特に目新しさはありません。 よくあると言えばある疾患だと思います。
 
病の治療法で一番大切なのはその原因を取り去ることですから、夫婦の関係が強いストレスのもとになっているのならそれを改善する必要があります。 しかし、それができていればそもそもストレスが原因の病にはなりません。 夫婦関係改善の努力そのものも強いストレスになることもありますし、家庭の事情は人それぞれ。実際の臨床では提唱者の言うように簡単に解決への道が開かれるとは思いません。
 

ストレス病に対する治療法

ストレス環境を改善する。

環境を変える努力をする必要がありますが、症状が酷いと、その努力が出来るだけの気力、耐力がないものです。 先ずは症状を緩和しストレスの原因と戦える状態にしないと話になりません。
症状が収まれば気持ちにも余裕が出てきます。 その結果、夫を許すことができたり、争って自由?を勝ち取ったりすることも可能になります。

ストレス耐性をつける

人は皆何らかのストレスを受けて生活しています。 しかし、ストレスで体を壊す人はストレスに対する抵抗力が弱かった可能性が高いです。 例え、どんなに強いストレスを受けても心身が健康で強靭な人はこれを跳ね返しますから。
これは、長年のストレスから来る心身の疲労だったり、何か不意に起こった強いストレスで心が弱ったのをキッカケにしたり、心理的な波で気が緩んだり、実生活で体力が落ちたりすることをキッカケにして耐性が弱り、発症します。
「健全な精神は健全な肉体に宿る」といいますが、コレは確かで、健康状態が良ければ精神(心)は強く保たれ、心が強ければ身体は病気にならないように反発し維持できるものなのです。
 

ストレスから逃げる

気力、体力がそれなりのレベルにまで達していないと逃避行動がなかなか取れません。 ストレスと戦うにしても、逃げるにしても大抵の場合、開放されるのはその一時だけで、その後に更に強いストレスを受けることが多のですから。 鬱の方が自殺未遂に走ったり、家出した妻が連れ戻された結果、その後にはこれまでとは比較にならないストレスが待っていることは想像に難くないでしょう。
逃げ切れば自由になれますが、これまでの生活はできなくなります。 それが分かっているのであまり行う人はいません。
 

ストレスと戦う

抑うつされた心が相手への攻撃心として爆発すると戦う事ができます。 これも気力、体力がある程度続かないと勝利を勝ち取ることはできません。 ささやかな反抗、イタチっ屁のような戦い方では気分は少し晴れるでしょうが、相手の怒りを買い、結果的に自分へのストレスが増すばかりです。 治療として戦うのであれば勝利しなければ意味がありません。
 

ストレスと折り合いをつける

相手を許せるべき所は許し、我を通す所は通します。 殆どの人はこの方法でストレスと上手く付き合っています。 相手との話し合いで約束などを取り付けたり、一時的に実家に帰ったり、夫に黙ってショッピングしたり…。 最も現実的で波風をたてない方法ですが、この方法では解決しなかったから夫源病となった可能性は高いはずです。
 

治療するには

最低限自分の身体と心を維持できる強さが必要です。 そのために悲観的な考えを起こしやすい状態となる、症状の緩和と体調の改善は絶対に必要です。
症状が落ち着いたら次は心の整理です。 治療者に相談するなり、愚痴をこぼすなりして自分自身の心を整理します。
心の負の感情を吐き出し、治療を進めて体調が上向いていくと同時にストレスへの耐性が強くなっていきます。 これが「心身の治療」となります。
心身共に一定の強さになれば後は家庭の問題です。
逃げるなり、戦うなり、折り合いを付けるなり、ご自身の気の済むようにするしかありません。
治療家は患者となった人の心身は癒せますが、会うことのないパートナーの事はどうしようもありません。 その方との関係。患者の家庭の問題に首を突っ込むのはタダの越権行為ですから立ち入ることもありません。
 
ただし、パートナーの方も貴方に強いストレスを与える要因は必ず持っています。 それは広い意味では心の病を持っているということであり、もしかすると身体的な不調もあるのかもしれません。
体調が悪く、心に余裕がないと相手に対して気遣いができなくなるのは誰だって仕方のないことです。 そう考えると程度の差はあれパートナーも夫源病となった貴方と同じ。 ただ、その原因が貴方ではなく会社やその他にあるだけのことでは無いでしょうか?
 
お互いの心身が健康で、皆に優しく、温かい社会が我々の周りにできるように今後も治療活動を行っていきます。
 
 

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