抗生物質が効かない世界

抗生剤、抗生物質とは「微生物の発育を阻害する物質」です。

主に菌類に対しての効果を持ち、ウイルスには効きません。 この抗生剤の発見により人類は様々な感染症を克服し、死亡者数を劇的に減らしました。日本で有名なのは結核でしょうか。 昭和25年では人口10万あたりの結核による死亡者数は146.4人だったものが平成10年は2.2人程度にまで激減しています。 このような素晴らしい側面をもつ薬ですが、近年は抗生物質の効かない耐性菌が良く話題に登ります。

抗生物質は細菌を殺し増殖を抑えるものですが、どんなに殺して殺して殺しまくってもこの世から対象の細菌をゼロにすることは不可能でしょう。これは試験管などの人の目が届く狭い範囲であればともかく、人体などの大きさとなった場合に対象の細菌を根こそぎ根絶したか、生き残りがいるのかは見分けられないということです。 この生き残った細菌が抗生物質への耐性をもつ耐性菌へと進化してもし増殖、感染を起こせば人類にはそれに立ち向かう術がありません。

これが耐性菌の発生するリスクです。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がすごく有名ですが、これに対する抗生物質はすでに開発されています。代表はバンコマイシン。 そのバンコマイシンにも耐性を持つバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRE)が現れます。 それに対してさらに強い抗生物質が開発され、またそれに対しての耐性を持った細菌が生まれ… というイタチごっこが繰り返されています。そしてどの薬も確実な効果を発揮して耐性菌を根絶することはできません。 新薬を使うだけでなく既存の複数の抗生物質を組み合わせて使ったりしてなんとか凌いでいる状況です。

当たり前ですが、これまでの薬に対して耐性を持つものが生まれてから新しい薬を開発するので人類は必ず細菌より後手となります。 それでもスムーズに開発されているうちは良いのですが、近年は細菌の進化スピードが薬の開発速度よりも早く、人類は押され気味です。 これは非常にマズイのですが、新薬の開発には莫大な時間とお金がかかるため、製薬会社は儲からない薬「抗生剤」を好んで作ろうとはしません。 抗生物質は耐性菌の問題が明るみになってからその使用を制限されるケースが増えてきました。 要は使えば使うほど耐性菌を発生させるリスクが高まるので必要に合わせて最低限だけ使いましょうという方針になったのです。 そうすると製薬会社の売上は下がってしまうのであまり進んでは開発しないようになりました。 今のトレンド?は抗がん剤やリウマチなどの慢性病に効く生物学的製剤でしょう。 製薬会社も営利目的の事業である以上、患者数が多くバンバン使ってくれる薬に開発労力をより割くのは自然なことです。

このような状況で個人が耐性菌によって発病し死んでしまうのはまだ良い方ですが、もしパンデミックが起こると最悪です。 現在でも世界では一年に70万人程は耐性菌によって死亡しています。相手は菌なので感染によって拡大しますから2050年には年間で1000万人ほどが死亡するだろうと試算されています。これを食い止める薬が現段階では無く、広がれば広がるほど加速度的に感染によって死亡する数は増えますから最悪は人類滅亡です。 日本も各国もこの事実を受け止めて対策を打ち出していますが、まだまだ効果も実績も足りない状況のようです。 特にカルバペネム系抗生物質に耐性を持ったアシネトバクター、緑膿菌、腸内細菌科細菌が非常に緊急を要するようです。 そう言えば、去年くらいに人の鼻腔から新たな抗生物質が発見されていましたがそれから話題に登りませんね。あまり効かなかったのでしょうか…?

 

国も医者も抗生物質の取扱には慎重になってきていますが、それでも現場レベルではまだまだ乱用気味の印象があります。 私も数年前にどの抗生物質も効かなくなった老齢男性を診たことが有りますが正直、何とも言えない恐怖感がありました。 万が一感染して発病すれば命の保証はないし、人類滅亡の発端にもなりかねませんから…。

 

さて、人任せだけではなく我々ができる予防措置はいくつかあります。

先ずは耐性菌を作らないこと。 必要な時以外は抗生物質を使わないことが第一です。 そして、医者に処方された抗生物質は必ず飲みきること。 医者は一応、害のある細菌を根絶するだけの必要量を処方するはずです。なのにもし飲みきる前に症状がなくなって治ったからと自己判断して飲み残せば、殺しけれなかった細菌は耐性を持ち貴方の体で住み続けます。処方された抗生物質は用法用量通りに必ず飲みきってください。

二つ目は感染しないこと。 様々な病気を発病している人が多い病院は感染危険区域です(笑) どこの誰が耐性菌を持っているかなんて判りません。人だけでなく動物やドアのノブ。貴方の周りの空気や水。全ての食物…。 ありとあらゆるところに細菌はいますので完全には避けようがないですが、それでも貴方の体に入ってくる菌数を減らすのはとても意味があります。効果的なのは手洗い、うがい。 単純ですが大切です。

三つ目は発病しないこと。 耐性菌が体にあっても発病するとは限りません。普段は無害で人の免疫が弱った時だけ悪さをするものいます。 また、免疫によって自然に淘汰されることもあります。 生き物の免疫は細菌と同じように環境や刺激によってその効果を変化させるので、免疫を上げることは感染に対して最大の汎用性と抗生作用を持っているといえます。 免疫が菌に負けるということは体内で菌数が爆発的に増加するということです。その結果、苦しい症状もでますし他人にも感染ります。周囲の環境も汚染します。 免疫を落とす生活習慣、薬の乱用などは行わないことです。

 

抗生物質は基本的に発病した場合にしか使いません。その使い方に一応の指針が国からあっても現場の医者の考え方や使い方は様々です。 そう考えると、やはり自己防衛は必須です。何よりも自分が発病しないことが第一ですから日々の健康管理を行うことは非常に大切なことになります。 極論すれば、周りのすべての人が抗生物質の全く効かない菌に侵されて苦しんでいたとしても自分の免疫が菌より強ければ感染しません。 貴方が生き残れば子孫も増えるかも? 自分の健康維持は人類滅亡の危機を救う一つの役割と可能性を持っているということです(笑) 

 

参考 http://answers.ten-navi.com/pharmanews/9205/

 

 

 

松山鍼灸院 漢方鍼灸個別治療室 仁塾